Dance in the rain
午後8時過ぎ。
閉店後の店内をモップで磨きながら、あたしは一体どうしたものかと悩みまくってる。
性格に難ありとはいえ、やっぱり翔也は恩人だし。
恋愛に性別は関係ないし。
翔也が本気なら、あたしも応援しなきゃって思う。
純さんの彼女って、どんな人なのかな……。
「えーと……花梨ちゃん、今日はやけに視線を感じるんだけど……もし何か聞きたいことがあるんなら、聞いて? 我慢しないでさ」
テーブルを拭いていた純さんが、若干引き気味であたしを見てることに気づいて。
「すみませんっあの、そのっ」ってもごもご口の中でつぶやく。
それから、思い切って。
「彼女さん、どんな人なんですか?」って聞いてみた。
きっと、ものすっごく可愛い子だろうな。
アイドル並み?
ミスユニバース級の美女かも。
でも純さん、意外なことに、顔を曇らせた。
「うーんと……あのさ」
「別れたんだよ、つい3日前」
カウンターの向こうから、マスターが答えた。