Dance in the rain
「わ、別れちゃったんですか!?」
「あはは……ふられちゃった」
小さく笑いながら、純さんはどこまでも穏やかに言う。
ふった……純さんを!
言葉を失うあたしを見て、「いや、それはさ」ってマスターがキッチンから出てきた。
「純のせいなんだよ」
「……え?」
純さんのせいって……?
「純にはさ、実はずっと想ってる相手がいるんだ。なのに自分の気持ち、気づかないふりして別の子とつきあうから、見抜かれて、愛想つかされちゃったんだよ」
ずっと……想ってる相手?
「もういいだろ兄貴、そんなにいじめないでよ」
力なく言って、純さんはカウンター席に腰を下ろした。
「いいもんか、このままじゃずっと何も変わらないぞ。一度当たって砕けてみたらどうなんだ」
「砕け散ったらもう立ち直れないよ。今までと同じ関係ってわけにはいかないだろ」
純さんのこんなブルーな声、聞いたの初めてだ。