Dance in the rain
「そ、そんなに難しい相手なんですか?」
そう聞くと、純さんは少し赤らめた顔を、あたしに向けた。
「周りには前からバレバレだったらしいんだけど……自覚したのは、最近なんだ。だからなんか……今更言えないっていうか」
え……ちょっと待って?
待ってよ?
純さんの隣に座ったあたしは、声をひそめて聞いてみた。
「もしかしてその人、純さんの幼馴染で、すっごくモテる人ですか? なのに恋愛はめんどくさい、とか言っちゃうような?」
純さんは、目を丸くしてささやき返す。
「え。なんで花梨ちゃん知ってるの?」
うそ……これって、もしかして……もしかすると……
翔也……まさかの両想い!?
ちりちりん——
軽やかな音に、靴音がかぶって。
「あ、翔也いらっしゃい」
「ん」
絶妙のタイミング、というか、最悪のタイミング、というか。
いつも通りのでかい態度で、翔也が入ってきた。
あたしはとっさに、ぱっと目を反らす。
とくとくって音を立てる胸を抑えながら。
なんだか、見たくなかった。
純さんと視線を合わせる、翔也のことを。