Dance in the rain

あぁ……結婚、したんだ?

バカみたい、あたし。


何が、神様が同情してくれたのかも、よ?
そんなこと、あるわけないじゃない。

神様は……そう、とっても不公平だ。

あたしはこみあげてきたものを飲み下して。
踵を返した。


◇◇◇◇
ゴロゴロゴロ……
スーツケースが、まるで足かせみたいにあたしの心を重たくする。

「ってぇなあっ!」
「……すみません」

「ちゃんと前見ろよ!」
「すみません」

「ごめんなさい」

「すみません」

何度ぶつかって、何度謝ったのか。
ただ機械的に謝って歩き続けているうちに、新宿の賑わいは遠ざかって。

ここ……どこだろ?
あたしは完璧、道に迷っていた。
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