Dance in the rain
とりあえず、泊るところ探さなくちゃ。
カプセルホテルなら、なんとかなるかな。
何日もってわけにはいかないけど……
心もとない通帳の残高を思い浮かべながら考えた。
そういえば、泊めてくれる人探すネットの掲示板があるって、誰か言ってたっけ。
そういうのって、危ないかな。
十代じゃないと無理かな。
ぼんやり考えていたら。
ポツン、ポツン……
やっぱり、というか、とうとう雨が降り出した。
最悪なシチュエーションだったけど、皮肉にもその冷たい雨粒が、あたしの意識を現実に引き戻した。
体力には自信あるけど、さすがに今は病院行ってる余裕とかないし、風邪ひいたらやばいな。
あたしはまず雨宿りしようと、視線を巡らせた。
そして「cafe雨音—あのん」って看板を見つけると、ろくに確認もせず、スーツケースでドアを押し開けるようにして入った。
ガコンッ!
ちりんちりん——
スーツケースのキャスターが躓く不恰好な音と、かわいいドアベル。
その不協和音に、店内の会話が一瞬すべて途切れて。
視線が一斉に、あたしに注がれた。