短編集-君が好き-
今日は3泊4日の宿泊授業。

とあるところの山奥に来ている。

次はレクリエーションで、体育棟に行きます。けど。

「ああっ!む、む、む、む…虫ぃぃ!やだぁ!来ないでぇぇぇぇ!」

こう絶叫中の私は羽瀬 彩(はせ あや)。高校1年生…。

私は大の虫嫌い。だから、カナブンと格闘中。

いつもだったら助けてくれる友達2人はレクリエーション係で不在。

ーーブーンッ。

カナブンが飛んで来た…!

いやぁぁァッ。怖い怖い怖い…!

誰かぁたすけてぇ。

急にグイッ、と引っ張られる右腕。

よろめく体。

体温を感じるからだの右側。

驚いて、引っ張られた方を見るとそこには。

「実…野……くん…」

そう、気になってるというのか、なんというかわからないんだけど…。

実野 智樹 (みのともき)くんがいた。

助けてくれたんだ、そう思うとパアッと明るくなる気持ち反面、恥ずかしい…かも。

「羽瀬、大丈夫?」

男の子らしい低い声。

高い身長。

そこまでかっこいいわけじゃない、人気があるわけじゃない顔。

だけど、素敵に見える…?

「うん。あり…がと…う」

「クククッ…」

お礼を言うと、堪えたように笑い出す実野くん。

「なんで笑ってる…?」

「いや。カナブンで絶叫してんのと…助けたら赤面したの思い出したら…」

え…私…赤面してた?

ややや…やだぁ!

このよくわかんない気持ち…周りに誤解されたくないよ…!

「ご…ごめん。とりあえず次はレクリエーションだから体育棟…行くね!」

そう言って走り出した。

恥ずかしい気持ちを残して。

実野くんのぬくもりが残った右手を左手でぎゅっとしながら。








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