私と二人の物語
「ところで、武井」

「はい?」

私が食べ終わるのを見計らって先輩が言った。

「おまえ、クリスマスイブの予定は?」

「え?イブですか?」

そう聞かれて、はたと困った。

無意識に避けてたけど、やっぱり悟と過ごすわけにはいかないと思った。

「特に予定がないなら、俺とどう?」

「え!?」

ちょっと飲みかけたブレンドを吹き出すところだった。

「な、なんだよ…俺が聞くとそんなに想定外か?」

先輩は苦笑していた。

「いえ、そういうことじゃなくて、先輩、彼女いるんでしょ?」

「彼女?いないけど?…あ、この前のガラス細工か」

「はい」

「あれは妹の誕生日プレゼント。しかもあいつの指定品」

先輩が少しブスッとして言った。

「あ、そうなんですか」

「そうそう。全然会社近くでもないのに『会社帰りに買ってきて』ってさ。ひどくない?」

「あははは、さすがの先輩でも妹さんには敵わないんですね」

「まあな」

そこで少し照れ笑いする先輩が素敵だった。
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