私と二人の物語
「悟、珈琲入ったよ」

私はソファーのテーブルに、珈琲と途中で買ってきたカヌレを置いた。

「ああ、ありがとう」

悟は伸びをすると、やって来てソファーに座った。

「お、カヌレ?美味そう」

「うん、美味しいよ。フランシーヌのだから」

「さんきゅ。…、…美味っ」

悟は言葉のとおり、美味しそうに食べていた。

その視線に気が付いた悟が私を見た。

「カヌレって言えば、思い出があるんだ。クリスマスに」

「え?」

ちょっとドキッとした。

「あ、そうだ。クリスマスはどうする?」

戸惑いは伝わらずに、彼はそれを口にした。

「あ、えっと…」

「あ、何かあるんだ」

「…うん、ごめん。多分、家の関係で、来られないと思う」

私は悟の表情を気にしながら、頭を下げた。

「いや、いいよ。仕方ないさ」

彼はいつものように笑ってくれた。

でも、やっぱりそこにはショックを受けた表情が隠しきれていなかった。

「ほんと、ごめんね」

私はそう言いながら、私の分のカヌレを彼の前にそーっと差し出した。

「美緒…」

その仕草に、彼はぷっと吹き出した。

「えへへ」

そこからは、またいつもの雰囲気に戻った。
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