私と二人の物語
坂を下りるにつれ、人があちこちに溢れ始めた。

「これは、遅くもなかったね…まだ三が日だもんね」

「そうだな…、まだ早かった…だね。仕方ない」

とりあえず、その人混みに突入。

少し人とぶつかるようになった時、悟が手を差し出した。

私はその手を少し見つめた。

私にはかなり長い時間だったけど、実際躊躇したのは、きっと一瞬。

私はそっと、手を重ねた。

私の方は手袋をはめたまま。

だからこそ、手を繋げたというのもあるけど、ほんとは外すタイミングが欲しかったと思ってしまった。

でも、手袋の上からでも、さっきまでポケットに突っ込んでいた悟の手は温かかった。


私たちは、押されたりぶつかったりしながらも、繋いだ手のおかげで離れることはなかった。

「ねえ、悟、手冷たくない?」

「大丈夫」

彼はそう言ったけど、きっと我慢してる。

一度繋いだ手を離したくないだけだと思う。
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