私と二人の物語
参拝の列に並んだ。

私には目の前の人達しか見えなかった。

悟にも、人の頭が並んでるのが見える程度らしかった。

少しずつ進む列の中にいると、暗くなった中なのにこれだけの人がいることでお祭り気分で、それでいて神社だから厳かで、何かそんな非日常がワクワクさせていた。

参拝できるまでかなり時間が掛かりそうだったけど、その間に2年前のこともゆっくり聞くことができた。

そのせいか、賽銭箱の前まで来た時に、そんなに待った気がしなかった。

目の前の人達が横にズレると、私たちの前には大きな賽銭箱があった。

そこでは仕方なく悟も手を離した。

私たちは並んで御賽銭を投げて、鈴を鳴らして、そして、それぞれ何かをお願いした。

私はたった一つお願いした後、顔を上げた。

横を見ると、ちょうど悟もこっちを見たところだった。

二人でくすっと笑うと、次の人のために横へずれた。

後はおみくじと…普通なら御守り。

なぜ普通なら、か。

ここの御守りは、男性が白、女性が赤の御守りを持つと縁結びになるから。

私には…


「美緒、おみくじ引こうよ」

「うん」

悟の差し出した手と私は手を繋いだ。

あ…

そういえば、さっきお参りする時に手袋は外した。

温かい…

私たちは、さっきと違う感覚に戸惑いながらも、その手を離さなかった。
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