私と二人の物語
私は少しその言葉を見つめていた。

「美緒?」

「あ、悟は何だった?」

私はすぐに笑顔で聞いた。

「おれ?」

「ん?どうしたの?」

ちょっと変な雰囲気で、私は人混みを避ける方へ連れて行かれた。

「これ…」

彼が私の前にまるで判決の時みたいな持ち方で見せたおみくじは、

「!!」

「な、びっくりするよな。いきなり初詣で『凶』を引くか?そもそも、縁起物の初詣のおみくじに入れるなよな…」

そう言って、悟はガクッと頭を下げた。

でも、私がその結果に驚いた理由は、悟のそれとは違っていた。

そんなこと、悟に分かるわけがない。

その凶は、きっと私のせいになる…

「じゃあ、ちゃっちゃと結んじゃおう」

「もう読んだの?」

「いや。まあ、凶といっても、今年気を付けるべきことが書かれてるんだろうけど、いい。後でリベンジするから」

「ちょっと…」

私はそれに乗った。

「もう」

そう言いながら吹き出した。

二人で笑い合いながら、おみくじを側のそれ用の場所に結ぼうとした。

すると、横で結んでいた女性が「凶は利き手と違う方で結ぶと困難なことを達成したということで吉に転じるらしいよ」と連れの男性に言った。

私たちはピクッとした。

「へえ、そうなんだ」

言われた連れの男性はそうしようとしていた。

(彼も凶なんだ…)

そして悟も、黙って左手で結ぼうとしていた。

私はくすっと笑ったけど、本当は、吉に転じることを願った。
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