私と二人の物語
第9章
つくしさんの冬休みも終わり、彼女が京都に戻ることになった。

勉さんのところに新年の挨拶は行ったので、その時にちょっと新年会みたいにはなったけど、その後に、つくしさんとは悟も私も特にゆっくり会っていない。

私は、どうしようか悩んだけど、やっぱり悟に相談してみようと思った。


私たちはリビングでお茶をしていた。

「ねえ、悟」

「ん?」

彼は私が呼んだ時にちょうどカヌレを手に取った。

私は、そのカヌレを見つめた。

「えっと、これ…」

「食べて」

そう言ってにこっとした。

「あ、うん」

悟はカヌレを口に頬張った。

今ではわかるけど、悟には大好物らしい。

まあ、私も好きだけど。

もぐもぐと口を動かして、胸を叩いて、珈琲飲んで、それが少し落ち着くと、

「で、な、なに?」

と言いながら胸をさすっていた。

「あはは、ごめん」

私はぺこりと頭を下げて笑った。

「つくしさん、京都に戻ると、そんなに来れないんでしょ?」

「まあ、たかが1時間の距離とはいえ、そろそろ大学も忙しいだろうから、そうだね」

「だからね、ちょっと送迎会というか、そういうのどうかな?と…」

「ああ、いいね、それ」

悟には、私ほど考えての台詞ではないと思った。

つくしさんが、その話に乗るかは聞いてみないとわからない。


その夜、悟が電話をしたら、勉さんも一緒に来ることになってOKということになった。

その勉さんもというのは、つくしさんが言い出したらしい。

何となく彼女の気持ちがわかったし、それもいいかと思った。
< 117 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop