私と二人の物語
「君が、そこからの風景が好きだったから…」

「え?」

彼はそう言って軽く笑った。

あ、そっか…

確かに、昼間も夜も景色、夜景が好きで見に行っていた。

それに、彼がイラストレーターだったことは知っていたはずのコト。

それでさっき、少し言いよどんだのか…

私、無神経なことを言ってしまった。

何か取り繕うつもりもあって、

「私、また他の作品も見てみたい」

と、絵を返しながら言った。

実際、見てみたかった。

「もちろん、いいよ」

彼はそれを受け取りながら微笑んだ。

「今から、とか…?」

私は尋ねる感じで首を少し傾げた。

「あ、ごめん。そろそろタイムリミット。これから仕事の打ち合わせだから下りてきたんだ」

彼はホームの時計をチラッと見ると、すごく残念そうに言った。
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