私と二人の物語
「ちょっと暑かったですね」

つくしさんが振り子時計を見たまま言った。

「そうだね。うん、涼しい~」

私は少し上を仰ぐようにしながら、言った。

それをチラッと見てつくしさんが笑った。

私もつられて笑った。

その笑いが消えて、彼女の表情が少し真面目になった。

「美緒さん」

「うん?」

「なに、気を使ってるんですか」

「えっと、気を使うとか、そういうんじゃないけど…」

「使ってますよ」

「だって、つくしさん、しばらく悟と話ができないんだなって思っただけで…」

すると、つくしさんがガクッと頭を垂れた。

そのまま何も喋らない。

「あの…」

私は黙ったままの彼女に声を掛けた。

「ほんと、そういうとこが、憎めないんですよね」

ため息をつきながら、そう言って彼女はゆっくり私を見た。

「ごめんなさい」

私はぺこりと頭を下げた。

すると、また彼女はガクッと頭を垂れていた。

「あれ?」

「もういいです」

彼女がガバッと顔を上げて復活。

「今日はありがとうございました。…悟のこと、よろしくお願いします」

そう言って彼女は時計の方を向いたまま頭を下げた。

「あ、うん」

私がそう言ったけど、その後は、特に何も言葉なく、私達は寒さを感じるまで座っていた。
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