私と二人の物語
そんなまだ1月も終わらない頃に、北山先輩から二度目のメールが来た。

『取引先からmoonsproutのチケットを2枚もらったんだけど、一緒に行く人がいないんだ』

そう書かれてあった。


「moonsprout…」

それは、私が高校の頃から好きなアーティスト。

先輩は、その事を知っている。

取引先からもらったというのは嘘かもしれない。

たまたまもらったのが、moonsproutだったとしても、それを好きな私を誘うということ…

断るのは当たり前だった。


「ん?」

そのメールの文面を見て、ふと気が付いた。

その日付けは、明後日。

前もって用意していたら、そんなに急に誘うかな…

逆に、急に誘ったら、あまり考える余裕がなくて、moonsproutだし、OKの可能性が上がると考えたのか…

それとも、誘ってはみるけど、私に用事がないことを賭けたのか…

それだと、用事がないなら必ず行くのが前提…


そんな風にいろいろ考えてしまった。

でも、やっぱり心は決めていた。

私は断るつもりで、返事を打ち始めた。


確かに、在学中はそういうモノには一切行けなかった。

だから、大好きなmoonsproutでも、ライブには行ったことがなかった。
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