私と二人の物語
先輩が生徒会室の鍵をかけると、私達は下足置場に歩き始めた。

他の教室にも廊下にも誰もいなかった。

廊下を歩く私達の足音が思いの外響いた。

気が付くと、二人きり。

(そうだ…今、二人きりなんだ…)

少し先を先輩が歩いていて、すぐ手が届きそうだった。

その肘をそっと摘まむだけで、何かが変わりそうだった。

そう考えただけで、心臓がバクバクし始めて、先輩にその音が聞こえるんじゃないかと、少し距離を取ったくらい。

でも、やっぱりその時は、その背中を見ていることしかできなかった。
< 131 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop