私と二人の物語
「すみません」

篠田さんのその声に私は彼を見た。

「お二人の雰囲気に、つい、あんな態度を取ってしまいました」

「篠田さん…」

「私はあなたを守らなければならないので」

「……」

「ただ、彼がどうとかじゃないのはわかってください」

「はい…、わかっています」

「それは、よかったです」

そう言って篠田さんが、優しく微笑んだ。

私は、少し言葉を探した。

でも、言うべきことはわかっていた。

「篠田さん」

「はい」

彼は私の言葉を優しく待った。

そう。

こういう人。

「今は、どうしてもやらなければならないことがあるんです。もう少しお時間をいただけますか?」

「ええ、構いません」

彼はあくまで優しく、そう言った。

そして、そのやらなければならないということが何かを聞かなかった。

「ありがとうございます」

私は頭を下げた。

「気にしないでください。今はあなたの主治医ですから」

「…はい」


(本当に、何を理由に、断れるの?)


その後、彼は私を家まで送ってくれた。
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