私と二人の物語
翌日。

「はい、差し入れ」

私はそう言いながら、悟の前に珈琲とカヌレの箱を差し出した。

「お、さんきゅ。うおー、カヌレだ!あれ?これどこの?…sa、wa、i?」

彼は箱の文字を読んだ。

「うん。悟好きだから、いろんな店の買ってこようかなって」

「そうなの?ありがとう」

悟が本当に嬉しそうだった。

「ほんとに好きなんだね」

「好き好き」

悟は一つ手に取っていろんな角度で眺めながら言った。

「いっただきま~す」

そう言って悟は一口。

「美味い!」

「そう?」

「ああ、外のサクサク感と、中のしっとり感のバランスが絶妙!それに、甘さも甘すぎずに絶妙!」

「いつものフランシーヌのと比べてどう?」

「こっちの方が美味い!」

「そっか、よかった」

私は珍しく興奮気味の悟に、笑いながら珈琲を口にした。

そういえば、もうすぐバレンタインデー。

今の関係で、チョコをあげないわけにはいかない。

でも、私はその日、このカヌレをあげようと思った。

チョコを渡すことは、今の私にはどうしてもできないと思った。

そういうことで、これだと悟も喜ぶし、ごまかせると思った。
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