私と二人の物語
「ほら、摩耶ケーブルの駅のとこの…」

「あ、桜のトンネル?」

「そう、それ」

「あそこかぁ」

私は納得した。

摩耶ケーブル下駅から下っていく坂の両脇に桜が植えられていて、この季節には、桜のトンネルが400m続く。

上からの一方通行だからセンターラインのない道路で、バスが通る時は張り出した桜の枝のために、真ん中しか走れない。

歩行者からすれば、歩く部分は広めだけど、シートを敷いて宴会をすることまではできない。

だから、歩きながら見るだけ。

そっちの方が私たちらしい。

「じゃあ、もう少しして、見頃になったら行こ」

「そうだな」

悟が頷いた。

「でも、ほんとそろそろだよね?」

悟が思い浮かべるような感じで言った。

「そうだね」

私は電車で、動物園の前をほぼ毎日通っているから何となくわかるけど、見頃は多分この週末くらい。

もしかしたら、天気次第で一気に咲くかもしれない。

土日は混むだろうから、金曜にでも行ってみようかということになった。

そろそろ春休みでつくしさんも帰ってくるはずだけど、もしそういうことになるなら、それは別に動物園の方に行けばいいと思った。
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