私と二人の物語
その金曜日。

いつもの時間に悟の家に行った。

向こうでそんなに長居するわけじゃないので、少し遅めに出た。

そこまではバス。

しばらく悟と二人で立って揺られていた。

バスは混んでいたので、揺れるたびに、私の腕が悟の身体に触れた。

悟が特に反応はしなかったから、私はそのまま、触れたり離れたりを続けていた。

目の前にいたとしても、話していたとしても、触れないと、本当にそこに居るのかわからなくなる。

これが記憶になった時、ほんとに現実だったのか、想像したことなのか、夢だったのか…

きっと、そんなこともわからなくなる。

だから、触れることは、きっと大事。

これくらいなら…

そんなことを考えながら、流れる車窓の風景を見ていた。
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