私と二人の物語
目的地の坂の下の近くでバスを降りた。

何でもない住宅街のはずなのに、バス通り沿いには少し人が多かった。

その先の方を見ると、少し桜が見えた。

「やっぱり、ほぼ満開?」

私は少し前を歩く悟に声を掛けた。

「とりあえず、その辺はまだ桜が少ないから、あの角を曲がってからだな」

悟は軽く振り返ると言った。

「そうだね」

私はそう言うと、悟に並んだ。


人の流れがある交差点の信号には『桜トンネル南』と書かれていた。

交差点の名前になっているくらい有名なところ。

その交差点を曲がると、桜のトンネルが少し遠くに見えた。

悟が言ったように、この辺りはまだ桜の本数が少ないけど、上の方はそれが圧縮されて淡いピンクの塊に見える。

「うわー、やっぱり満開だね!」

「そうだね…」

悟が少し見惚れて言った。

お互い、顔を見合わせて頷くと、ゆっくりと坂を上り始めた。
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