私と二人の物語
上るにつれ、段々と桜の本数が増えていく。
その感覚は心地良い。
私たちは、特に言葉なく、ゆっくり上った。
最初のうちは、ただ、ずっと前を向いたまま。
視界に淡いピンクが増えていく。
それにつれて、私たちは視界を左右に振り始めた。
一度、その視線が重なって、胸が跳ねたので、軽く目を逸らした。
そして、トンネルという感じのところで、私たちは足を止めた。
「きれいだな」
「うん」
枝が道を覆う様に伸びていて、それが満開で厚みがあって、上の方が少し急になっているからさらに桜の花が圧縮されて、本当にトンネルみたいになっている。
悟によると、ここは摩耶ケーブルが大正時代にできた時植えられたらしい。
その大正という言葉が、この神戸のエッセンスである歴史を感じさせて、さらに感覚を心地よくさせる。
それでなくても、この桜のトンネルを行き交う人々は笑顔で溢れていた。
そして、今日の天気はもうしばらくすると、この景色を黄色く輝かせそうだった。
「これは少し長居した方が良さそうだね」
私が桜ではなく空を見上げたのを感じ取って、悟が言った。
「うん」
私は、今感じた気持ちに、涙が溢れそうになって、その一言しか言えなかった。
悟はそのまま上を見ていたから気付かれずにすんだ。
それから私たちは上まで上ると、あまり言葉はいらずに、段々と周りが輝いていく中にずっと佇んでいたのだった。
その感覚は心地良い。
私たちは、特に言葉なく、ゆっくり上った。
最初のうちは、ただ、ずっと前を向いたまま。
視界に淡いピンクが増えていく。
それにつれて、私たちは視界を左右に振り始めた。
一度、その視線が重なって、胸が跳ねたので、軽く目を逸らした。
そして、トンネルという感じのところで、私たちは足を止めた。
「きれいだな」
「うん」
枝が道を覆う様に伸びていて、それが満開で厚みがあって、上の方が少し急になっているからさらに桜の花が圧縮されて、本当にトンネルみたいになっている。
悟によると、ここは摩耶ケーブルが大正時代にできた時植えられたらしい。
その大正という言葉が、この神戸のエッセンスである歴史を感じさせて、さらに感覚を心地よくさせる。
それでなくても、この桜のトンネルを行き交う人々は笑顔で溢れていた。
そして、今日の天気はもうしばらくすると、この景色を黄色く輝かせそうだった。
「これは少し長居した方が良さそうだね」
私が桜ではなく空を見上げたのを感じ取って、悟が言った。
「うん」
私は、今感じた気持ちに、涙が溢れそうになって、その一言しか言えなかった。
悟はそのまま上を見ていたから気付かれずにすんだ。
それから私たちは上まで上ると、あまり言葉はいらずに、段々と周りが輝いていく中にずっと佇んでいたのだった。