私と二人の物語
私は、思いもよらなかったことに衝撃を受けた。

最初からまるで疑いもなく、形式上だけの婚約だと思っていて、そこに本当の想いがあるとは針の先ほども思っていなかった。

それが、本当は…

姉の死を受け入れられない人が、ここにもいたということ。


「そ、それなのに、私とのこれからのことを考えられているんですか?」

私はその先を考えないように自分をごまかしながら聞いた。

篠田さんは、少し視線を落とした。

そして、何かを決めたように、また私を見た。

「あれから、約2年半…ですね」

「…はい」

「正直、まだ事故のことを何とかできたわけじゃありません。それに、まだあの頃の、お姉さんを、忘れられたわけじゃありません」

「篠田さん…」

「そしてもちろん、今のあなたとお姉さんは違う人間です。すぐに今度はあなたを、と、簡単に気持ちを乗り換えることはできません」

「…はい」

「でも、あなたも素敵な女性で、結婚相手としては申し分ないし、それに…」

「それに…?」

「今度は守りたいと思っています」

「篠田さん…」
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