私と二人の物語
玄関が開く気配に気が付いた。

どれだけそうしていたのだろう。

私はまだドアのところにうずくまっていた。

私は何とか立ち上がると、ベッドに横になった。

部屋には窓から黄色い光が射し込んでいた。

トントン。

「はい」

ドアは開けずに声だけで返事をした。

「お嬢さま、ただいま戻りました。今日はもうお出掛けになりませんか?」

鍵は掛かってないけど、好江さんは何かを察してドアを開けずに言った。

「…うん、出掛けないよ」

「わかりました」

好江さんが降りていく気配がした。
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