私と二人の物語
「ただいま」

「あ、お帰りなさいませ、お嬢様」

玄関のドアを開けると、ちょうど好江さんが掃除道具を持って広めの廊下を歩いてきた。

「おや?何か良いことございましたか?」

「え?ううん、ないよ」

私は少し慌てながら手を左右に振った。

「そうですか?」

「うんうん」

私は今度は頭を縦に振った。

さすが好江さん。

「何かお召しになりますか?」

彼女は少し引っかかりながらも壁の時計を見て言った。

お茶の時間にはちょっと遅い。

「ううん、大丈夫」

私は軽く首を振った。

好江さんは軽く頭を下げると、応接間の方に入ろうとした。
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