私と二人の物語
しばらく人気のない狭い坂を駆け下りた。

でも、段々その足取りはゆっくりになった。

溢れる涙で前が見えなかった。

「私、ほんと、何てことしちゃったんだろう…何てことを…」

私は木の陰で立ち止まると、異人館の壁に倒れるように寄り掛かった。

壁沿いの木が枝を道の上に広げていて、その緑の葉の隙間から明るい陽射しが零れていた。

その空間が、私を居させてくれる気がした。

「私、何てことをしちゃったんだろう…」

私は、その場に崩れるようにしゃがむと、そのまま、泣き続けた。
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