私と二人の物語
食事が済んでいつもの薬を飲んだあと、好江さんが珈琲を淹れてくれた。

父はそれを持って書斎に行った。

私と母はさらにデザートも出してもらって、黙ったままそれを食べた。

「珈琲のお代わりはいかがですか?」

「ううん、いいわ」

母もそれで席を立った。

「私はもらうね」

「はい」

好江さんは、ポットから私のカップに珈琲を注いだ。

「ありがとう」

好江さんがにこっとした。

日頃、こうして二人っきりになることも多い。

「好江さん」

「はい」

言いかけて、意外と話すのに動揺していた。

「明日は少し遅くなるかも」

私は平静を装いながら言った。

「夜はどうなされます?」

「う~ん、どうなるかわからないから、用意しなくて大丈夫」

「はい。わかりました」

好江さんはにこっとした。


明日はどんな流れになるか、ちょっとわからなかった。

絵を見に行くのを口実にして、一緒に居たはずの部屋へ行きやすくしただけ。

自分の気持ちを考えると、長居できるかどうかわからなかった。

やっぱり、恐さはある。
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