私と二人の物語
家の中に戻ると、やっぱり声が聞こえたようで、好江さんが心配そうな顔で立っていた。

「すみません、立ち聞きなんてはしたない真似を。でも、はっきりとは聞こえませんでしたから」

「うん、いいよ。最初は応接間で話すつもりだったし」

私はそのまま二階に上がろうとした。

「お嬢さま、大丈夫ですか?」

私は振り返った。

「うん、大丈夫。私が自分で何とかしなくちゃいけないことだから」

「お嬢さま…」

好江さんがシュンとしたので、

「あ、美味しい珈琲飲みたいな」

私は階段から下りると、そう言った。

「あ、はい。ただいま」

好江さんは、くるりと回ってキッチンの方へパタパタと行った。

私はその後ろ姿を見て、少し笑えた。
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