私と二人の物語
「今日ハーバーランドのホテルに行ったんだろ?」

晩ご飯の時、父が上機嫌で私を見た。

「うん」

「で、どうだった?」

「素敵なとこだったよ」

「そうか。さすが篠田君だな。そういうセンスもいい」

「まだ決めたわけじゃないよ?」

「好江さん、これ、美味しいわね。もう一つもらえる?」

母はスペインオムレツのお代わりを好江さんに頼んだ。

すごく嬉しそうな父に対して、母はあまり関心がないようだった。

「君、自分の娘の結婚式に興味はないのか?」

さすがに父は母に少し抗議した。

「別にそういうつもりじゃないわ。あ、ありがとう」

母は好江さんからお代わりをもらうと、父を見た。

「ただ…」

「ただ?」

父は母の視線と言い方に少したじろいだ。

「まだ『早いんじゃないか』とは思っているけど?」

母はさらに視線を厳しくして父を見た。

すると、父はその視線から少し逃げた。
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