私と二人の物語
篠田は、独り取り残された感じに戸惑っていた。

「あの、お嬢様はどうされました?」

好江が物音を聞いて居間に顔を出した。

「ああ、何か美味しいカヌレがあるとかで、買いに行っちゃいました」

「あら、そうなんですか?多分、あのお店だと思うけど、歩いていくにはちょっと遠いんですけどねぇ。おっしゃってくれれば私が買いに行ったんですが…じゃあ、少しお待ちくださいませ」

そう言いながら、彼女は部屋を出て行った。

好江さんもそれなりに高齢だから、それなら自分が…と考えながらも、篠田は飛び出して行った彼女が気になっていた。

彼女が見ていたパンフを手に取った。

特に他のと変わったところは感じなかった。

「この式場に何かあるのかな…」

でも、彼女が結婚式場とかに関係しているわけはなかった。
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