私と二人の物語
腕時計を見た。

約束の15分前。

彼はもう来ているかもしれない。

……ううん。

多分、来てる。


私はドアを開けて中に入ると、左右の客席を見ながら女性の店員さんに待ち合わせだと告げた。

私はすぐに、右手の奥の窓辺で軽く手を挙げている彼を見つけた。

店員さんもそれを確認すると水とおしぼりを用意しに行った。


彼の側まで行くとカップは既に空だった。

「ごめんなさい。待たせた?」

言葉に気を付けた。

「いや、俺が早く来過ぎただけだから。どうぞ」

「うん」

私はコートを脱ごうかどうしようか迷った。

ここは、分かりやすいように、そして寒くないようにと選んだだけ。

「せっかくだから、少しお茶をして行こうよ」

彼は座ることを促した。

「それに、ここもよく一緒に来ていたんだ」

彼は少し周りを見ながら言った。

「うん、わかった」

それなら断る理由もなかった。
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