私と二人の物語
「ここにいくつか絵を持ってこようかとも思ったんだけど」

「ううん。お家まで行くつもりだったから」

「そっか…」

彼はまたほっとした顔をした。


「悟、ありがとう」

私は、その言葉が素直に出た。

「いや…」

彼は軽く首を振った。


そんなに経たないうちにブレンドとケーキが来た。

確かに、ここのマロンケーキは上品な甘さで、それに少しずっしりとした感じで、ここの苦味とコクのあるブレンドに合う。

きっと、好きだったはず。

私はまずブレンドの香りを楽しんで、一口飲んだ。

思わず笑顔になる。

そして、マロンケーキを一口。

さらに笑顔が零れる。

「うん、君はいつもそんな顔で食べてた」

「だって、美味しいよ~」

私は、二口目を味わった。


目の前で悟も美味しそうにショコラケーキを食べていた。

重厚で歴史を感じる様な造りの店内には、特徴のある窓から、レースのカーテンを通して暖かい光が差していた。

除湿が利いている様で、窓の内側には結露はなかった。

店内には他のお客の会話とかで少しざわめきがあったけど、特に耳障りでもなかった。

逆に落ち着くような感覚もあった。
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