私と二人の物語
「美緒…、良かった…、無事だったんだね」

「あ、あの…」

「俺は君が突然いなくなって、事故にでも遭ったんじゃないかと、この2年間、ずっと心配していたんだ」

私は彼の胸に顔を埋めさせられていた。

普通なら悲鳴を上げるところだけど、彼は私を「美緒」と呼んで、躊躇なく抱きしめた。

そして、この抱きしめ方。

だから、戸惑いながらも私は悲鳴は上げなかった。

呼ばれた名前とその台詞で、私は抱きしめられた理由がわかっていた。

そして、あの事故の理由も今になってやっとわかった。

顔を少し離して、もう一度その人を見た。

突然いなくなって責めるというより、言葉どおり、心配していたらしいその表情。

少しだけ茶髪の髪型はフワッとしていて、顔もそれなりに整ってかっこいいのに、誠実そうで、純粋な感じ。

そして、耳に心地良い、優しく物静かな話し方と声。

なんとなく、好きになりそうな感じ。

多分、そう。

彼はきっと恋人だった人。

そして、彼はこう言った。

「今、ちゃんと幸せなのか?」

自分のコトを置き去りにしたその台詞と言い方に、私は胸が熱くなった。
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