私と二人の物語
「美緒」

「ん?」

私は一口飲んだカップをそのまま持ったままで彼を見た。

「今はどうしてるの?」

「えっと、仕事とか?」

「仕事は…今もしてないんだよね?」

「あ、うん」

そっか、そのことは言ってたんだ。

「ごめん、答えに困る質問だった」

「ううん…」

私は軽く首を振った。

何となく普通に聞いたんだろうな、と思えた。

愛し合っていたはずの彼女が、訳も分からず、突然消えた…

普通ならそんなに冷静でいられるはずがない。

ゆっくり時間のある中で、何から聞いたらいいかまとまらないのかもしれない。

ただ、悟には、事故のせいだとわかってるだけじゃない落ち着きがあった。

それは私への想いが小さいということではない。

彼は、自分がどう思われるかより、相手のことしか考えてないという感じだった。

「とりあえず、リハビリ的にのんびりさせてもらってるよ」

「そう?」

「うん」

彼は私の笑顔に合わせるように笑った。


その後はしばらくお互いの質問合戦みたいになったけど、それはそれでだんだん会話も弾んでいろいろ聞くことができて良かった。
< 30 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop