私と二人の物語
「じゃあ、そろそろ行く?」

彼が空のカップを見て言った。

「そうだね」


私たちは店を出ると、すぐ横の坂を北野町の方へ上っていった。

北野町の上の方は異人館が建ち並び、観光客も多い界隈だ。

この坂の行き止まりまで上ると、左右に延びる道で、その通り沿いにも有名な異人館が並ぶ。

私たちは、少し左へ歩いた後、そこからさらに上の方へ上って行った。

その細めの坂の行き止まりの左側に、白壁に焦げ茶の柱がアクセントとなったちょっと変わった洋風の建物があった。

一階部分がお店で、その左横の煉瓦造りの擁壁には階段があってその上は花が揺れているのが見えた。

多分、庭。

その庭の奥に二階建ての自宅みたいな建物があって、それは手前のお店と後ろの方で続いている。

自宅の方も二階部分が後ろにずれていて、それはそれで一階の様な変わった造り。

斜面に建てられているから、そんな造りなんだと思う。

お店は「骨董 北野堂」と看板が掲げられていた。

真ん中のドアの左右は少しショーウィンドーみたいな造りで、骨董屋らしい品物が飾られていた。

ドアには「close」のプレートとは別に「森山デザイン」というプレートが掛かっていた。

悟は鍵を開けてそのドアを開けた。
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