私と二人の物語
悟は駅まで送ると言ったけど、私は、

「大丈夫。また来るから」

そう言って断った。

拒絶じゃない。

子供扱いしないでというニュアンスで。

でも、事故にあったんだろ?

…というツッコミはなかった。

ただ、私自身が急ぎたくなかっただけだった。

それに、ここからの帰り道を独りでゆっくりと実感したかった。


店の出口で手を振る悟に私も手を振り返しながら、坂を下り始めた。

下の1軒目のところまでくると、もう彼は見えなくなった。

私は前を向くと、ゆっくりと周りの風景を見ながら下った。

異人館の通りに出ると、それなりに人通りが増えた。

そのせいか、少し現実に戻った気がした。


遠回りしたい気分だったけど、とりあえず駅までの最短のルートを歩いた。

遠回りは、いつものルートがあってこそ。

まずは、いつも通っていたはずのルートを見つけないといけないと思った。
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