私と二人の物語
発車のベルが鳴ってガタンと車両が上り始めた。

駅舎を越えると段々と景色が見えてくる。

「やっぱりこれ、わくわくするね」

私は思ったよりも笑顔で悟を見た。

「そうだね。俺も大好きなんだ」

悟もお澄まし顔で言った。

山頂までの真ん中辺りまでその景色に見惚れていたが、木々でそれが見えなくなった。

「ねえ、悟」

「ん?」

「今日はなんでここに来ようと思ったの?天気がいいからだけ?」

「そうだな…」

悟は少し言葉を選ぶように視線を外へ向けた。

「なんとなく、美緒を2年前の順番で案内するのもいいかな…と」

「え?」

「ほら、記憶を辿る旅、みたいな?そんなのもいいかと。まあ、最初によしおか珈琲に行ったのは違うけどさ」

「ああ、そっか」

私はそこまで考えつかなかった。

「それも、いいね」

大賛成だった。

そっちの方が、2年前をもっと実感できる。

「そう?良かった」

悟は少しほっとした感じだった。

彼も私の記憶を取り戻したいと思ってるはずなので、利害は一致していた。

「じゃあ、悟には同じ思い出で申し訳ないけど、それでお願いね」

「ああ、もちろんいいさ」

彼は彼で嬉しそうに笑った。

「よろしくね♪」

私はそう言いながら、もうすぐ終わる外の景色を見つめた。
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