私と二人の物語
オルゴールミュージアムや高山植物園を過ぎて次は展望テラスだった。


バスが右の方へ入って行くと、ちょっと小高い丘の上に建物が並んでいるのが見えた。

建物は3つか4つだけど、その立体的な配置はヨーロッパの城塞都市みたいなものを感じさせて好きだった。

その前でバスはくるりと転回して停まるとそのドアを開けた。

私たちは、前の方の人達が降りてから、ゆっくり降車口へ向かった。

降りる時に、ノンステップバスとはいえ、私がヒールを履いてたので、悟が手を差し出しかけたが、何かに気付いたように引っ込めた。

私はその手を取りかけたけど、やっぱり引っ込めた。

悟は、私に合わせてゆっくり降りてくれた。

バスから降りた瞬間、地面への1歩が何か特別なものに感じた。

でも、私は悟に気付かれない程度に、軽く首を振った。
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