私と二人の物語
「分からない…」

「え?」

彼女には思いがけない言葉のようだった。

「正直に言うと、分からないよ」

私は繰り返した。

「だって、今、悟と一緒にいるのに…」

「うん、そうだけど…。でも、私も最初は戸惑ったよ?」

彼女は少し固まった表情を戻した。

「今は、2年前のことを、辿っているの」

私は嘘のないように言葉を選んだ。

「それは、確かに、美緒さん記憶を失ってるけど…」

「その辿っていることが全て埋められたとして、その時どうなるのか、私、自分でもまだ分からないよ」

私は湯気が立っているブレンドを見つめた。

「それ、酷くないですか?」

つくしさんが私を睨んだ。

「悟は…ううん、悟がどれだけあなたを探したと思っているんですか?そして、やっとまた再会できたのに」

「それは、少し考えただけでも分かるよ。分かるからこそ、私は、それに応えられるか、応えていいのか、分からないのよ」

言い換えた言葉は、彼女に聞こえないくらいの小さな声で言った。

「でも…」

「私はあの時の私じゃないのよ。あの時の二人を知らないの。今は、それを知ろうとしているの…」

私は彼女の言葉を遮った。

「それに、彼の描きかけの絵を完成させてあげなくちゃいけないの」

私がそう言うと、つくしさんは、少しハッとした感じだった。
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