私と二人の物語
「…なに?」

私がそれを聞くと、彼女は少し視線を逸らした。

「ねえ、なに?」

「悟、あの絵が完成したら、初めての個展を開くって言ってた」

「え?そうなの?」

「うん。…あなたも知ってたコトだけど」

「あ…、そうなんだ…」

私は、また少しショックを受けた。

また、彼に無神経な対応だったんだ…

「あ、し、仕方ないですよ。だって記憶をなくしてるんだもの」

つくしさんが、慌てて両手を振りながらフォローした。

そして、フォローしたことに彼女は固まった。

私も。

お互い吹き出した。

しばらく笑った後、また来た時の雰囲気に戻った。

「…そうですよね。一番戸惑っているのは、美緒さんなんですよね…そう思い直してたんですけど」

つくしさんは、軽くため息をついた後、そう言った。

最初の雰囲気はそのせいか…

「…ありがとう」

私はそう言って微笑んだ。

「ううん。分かりました。とりあえず、2年前を取り戻して。それからのことはその時」

そして、彼女も笑みを浮かべた。

「ほら、美味しいブレンドが冷めちゃう」

「そうだね」

私たちがそれを飲み干すと、戸惑って待っていた店員がさっき頼んだケーキをテーブルに置いた。
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