私と二人の物語
「開け方を全部知ってるわけじゃないんでしょ?」

私がそう聞くと、

「既存のは全部開けられるよ」

「俺もだ」

と、二人はこっちを見て、さも当たり前のように答えると、また考え込んでいた。

「どれくらいするのかな?」

私の質問に、二人がまたこっちを見たが、

「まずは開けてみないと、作者もどんなモノかもわからないし、値段の付けようもないな」

「ああ、そうだな」

二人はそう言うと、また考え込んだ。

そっか、そうだよね。

だから、悟も勉さんに相談に来たんだもんね。

「で、悟。これを持ち込んで来たのは?」

勉さんが、眼鏡を少し下げて聞いた。

「清水の奥様」

「清水家か…」

「清水家?」

「神戸では古い家柄の金持ちだよ」

「元輸入商だな」

二人はこっちを向いてそう言うと、また考え込んだ。

えっと、ちゃんと答えてくれるんだけど、なんだか…

何にも知らなくてすみません…って感じ。


「まさか、実は秘密箱ってことはないよな?」

勉さんがメガネを下げて悟を見る。

「だって、スライドするとこが一つもないよ?」

悟があきらめ気味に答える。

「そうだな…ちょっとこの真ん中の境が少し気になるが、スライドはしないな」

勉さんがまたメガネを上げる。

そんな感じ。
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