鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
最初から、ラスボス登場
「…嘘でしょ。」
青天の霹靂とはこのことだ。
連休明けに出勤したら、会社の名前が変わっていた。
正確には元々の名前の上に、余計なものが付け足されている。
「買収されたみたいだな。」
あたしの隣に立って冷静に状況を分析するこいつは高本 洋介。唯一の同期で、営業部のエースである。
新しい社名プレートに書かれた
【ソレイユホールディングス 丸菱商事】
の文字を見ても表情一つ変えない。
「驚かないの?まさか知ってた?」
「知らねぇよ。でも何でまたこんな大企業が。」
確かに。うちもそこそこ業績は良い方だとは思うけど、こんな大手の企業グループに目をつけられる迄ではないと思っていた。
しかもこんなに突然。
普通事前に通達があってもいいはずなのに。
それにこの会社…凄い嫌な思い出があるんだけど…。就活の時酷い扱い受けた事を思い出す。
「私達の席…ちゃんとあるかな。」
リストラとかもあるのかな…?と想像もしたくないような流れが一瞬過って不安になる。
いきなり無職は辛過ぎる。
「大丈夫だろ。また社長の悪いクセだって。」
「だといいけど。てか高本、こんな時も動じないって本当心臓に毛が生えてるんじゃない?」
「それはどうも。」
「褒めてないから。」
入口にいたって真相はわからない。
私達はエントランスを抜けて自分達の部署のフロアに向かった。
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