鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
「まぁ、お前の自覚の無さも原因ではあるんだけどな。」

焼き鳥をかじりながらぽそりと呟く高本。


「自覚？」

「わかんないと思うから考えんな。とにかく今の状態どうするか考えないとなー。」


なんの自覚かわからないけど、考えなくていいらしいので考えない。
てか今の状態をどうするって？

何を言われてるのか分からずじっと高本を見る。と、デコピンされた。


「痛い。」

「何お前、このまま召使い続けるつもりなの？」

「え…」


そんな事考えもしなかった。
必死過ぎて考える間がなかったのもあるけど、辞める事なんて思い付きもしなかった。

給料も上がったらしいし、貯金して辞めて転職活動も出来るのだ。

なんでだろう…と、思ったその時、テーブルに置いたスマホが着信を知らせた。


“蓮水社長”


召使い小笠原澄のご主人様の名前がディスプレイでチカチカ光っている。


「…」

「出なくていいのかよ。」


出るけど…出たらビールもう一杯飲めないじゃん…
でもイライラしながら電話をかけている蓮水社長の姿が浮かぶと、出ないわけにはいかなくて。
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