鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
「お邪魔します…」


ワンフロアに一世帯という贅沢な部屋に入って挨拶をする。


「何だかしこまって。何回も来てるだろ。」

「まぁそうですけど、一応…」


来てるって言っても仕事モードの時だから、緊張感はあるけど変な感じはなかった。でも今日から寝泊まりもするとなると、やっぱなんかちょっと変な感じだ。

不意打ちでキラキラし出す社長に変な気起こしたらどうしよう。
なんて、バカな妄想をして打ち消す。

そんな事したら「お前何やってんだ」と冷たくあしらわれ、女としてのプライドが台無しにされる事まちがいない。
高本いわくほぼおっさんの私にあるプライドなんてたかが知れてるけどさ。


「ここを使え。お前の荷物は明日届くように手配してある。」


リビングから繋がっているドアを開ければ、8畳ぐらいのフローリングが広がっている。


「え?もうですか?ていうか社長そんな事私がやるのに…」

「あるものは適当に使ってくれていいし、足りなければ渡してるカードで買ってくれ。」


聞いちゃいない。
でも個室を与えてもらえるのはありがたい。
廊下ででも寝るつもりで来たのだから。
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