鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
「失礼しまーす」

「ああ。」


入ったそこは大理石で出来た床と初めて見たけど猫足のバスタブが置かれた外国のホテルみたいな空間。
帰りがけににリモコン操作してお湯を張った湯船に浸かっている我が社長は、気持ちよさそうに目を閉じて上を向いている。

仕事中にはない変な色気が目のやり場に困る。


「突っ立ってないでこっち来い。頭洗ってくれ」

「へ、は、はい。」


どうしよう他人の頭なんて美容師でもあるまいし洗ったことなんてない。
だけどぼーっと立ってるわけにも行かないので、近寄り社長の頭側に膝をつく。

シャンプーを手に取り、ぎこちなくも髪の毛に手を差し入れゴシゴシと洗い始める。

どうしよう…めっちゃドキドキしてるんだけど…なにこの緊張感…ヤバイ。


「力加減どうですか?」

「丁度いい。」


ゴシゴシ
ゴシゴシ


泡を流し終わる頃にはどうにかなりそうだった。

「お前も入れ。」

「へ?何言ってんで…す、うわっっ」


今度は何言い出すんだ。
聞き違いか?と思える言葉に驚き立ち上がると、足元のシャンプーに躓き、あっと思った瞬間…がっしりした腕に支えられ転ばずに済んだ。


「何やってんだ。」

「すいません…」
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