鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
結局濡れてしまったTシャツと短パンを脱ぎ、湯船に浸かることになってしまった。

そして背後には社長の気配。
さっきと逆の位置関係で私の頭を洗ってくれている。

私の方がおかしいのか?と思うほど彼は冷静で、これがさも普通の事のように思えてくる。

身体に巻きつけたバスタオルが外れないように必死に抑えているけれど、この様子だと例え裸を見せたとて瞬き一つしないんじゃないだろうか。

女として見られてないのか、と思うと何故か苦しくなった。


「社長って彼女いないんですか?」

「…気になるか?」

「いや、もしいたらこんな事してていいのかな…と思って。」


もし私が彼女なら、彼氏の家に知らない女が住んでて、しかも一緒にお風呂に入ってるなんて絶対嫌だと思う。

と言うかそんな人絶対選ばない。


「もしかして…男の人が好きとか?」

シャワーでシャンプーを流してくれる社長に今度はそんな事聞いてみる。
もしそうだったら、一緒に住むのもありかもしれない。


「は?」

「や、だってこの状況であまりに冷静すぎると言うか…」

「……」


沈黙が流れた次の瞬間。
顎に手がかかり、グイッと上を向かされた。
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