鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
「しゃ、社長…この人に社長譲るんですか?」


小声で目の前の社長に尋ねる。
このおじいちゃん社長だから楽しくやってこれたのに。


「フォフォ、いやぁわしもそろそろ引退しようかと思ってのぉ。蓮水くんの所のグループがうまく運営してくれるみたいじゃから、ワシは隠居してばあさんとクルーズ旅行にでも出かけるとするよ〜。」


呑気な。
確かに第一線で働くにはお年を召されているけれども。


「なぁに、蓮水くんが社長をしてくれるんだから安心しなさい。」

「でも社長、私の席なくなっちゃったみたいなんです…」


だから安心なんてしてられないんです!!
涙ながらに訴えるも、社長はニコニコするばかり。


「…おい。」


すると凄い威圧感で、蓮水と名乗るその人が呼んできた。

整った顔だけに、じっと見られると震え上がりそうな程迫力がある。


「な、なんでしょうか…」

「社長は俺だ。」

「は、はぁ…」


それはさっきお聞きしましたけど。
なんでわざわざ私に向かって言ってくるのだ。
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