鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
ため息をつき下を向くと、さっき履かされたシルバーのパンプスが目に入った。

これも私の好みなんだから笑えてくる。

光沢を楽しむように足首をあげたり下げたりしていると、茶色い革靴のつま先が視界に入った。


「何壁の花してんだよ。」


顔を上げると、見慣れたひねくれ顔。


「高本…。」

「なんつー顔してんだ。ぶっさいく。」


高本のこの憎たらしい顔を見たら、沈んでた気持ちが少しだけ軽くなる。


「ぶさいくで悪かったねっ」

「てか、お前さっきそんな格好だったっけ?」

「んなわけないでしょ。何わかんないけど着せられたの。そういう高本は仕事どうしたの?」


午後からアポがあるって言ってた事を思い出して聞いた。


「あー…あれ明日にした。今日はもっと重要な任務が出来たからな。」

「任務?」

「お姫様を攫いにね。重要だろ?」


ニヤリと笑って、私の手を引き立ち上がらせた高本の顔は私の知ってる彼の顔じゃないみたいで。


「行くぞ。」


高本がそう言った時だった。


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