鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》
何が起こったのか理解するまでに少し時間がかかった。

さっきまでこの手の中にあったあいつの温もり。
今は壇上の上、驚いた顔で隣の男を見上げている。


本当に、目を離した隙にこんな事になるなんて。
俺が何の為に他の男を遠ざけていたのか…
あの傲慢な男の為では決してない。

悔しくて拳を握りしめた次の瞬間、俺の目に映ったのは。


「めちゃめちゃ好きなんじゃん…」


嬉しそうに、でも恥ずかしそうに笑う彼女の横顔は、この長年の想いの幕引きにはあまりにも眩しすぎる。


ああ、こんな事になるとわかってたら。
もっと早くに自分のものにすればよかった。
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