鈍感過ぎる彼女の恋は。《完》

その日俺は、一人の女に全てを持っていかれた。

偶然体調不良になった人事部長の代打で新卒の面接官の席に座らされた。
現社長の息子だと言う素性は隠して働いていたのに抜擢されたのは、おそらく親父の差し金だろう。

断るのも不自然なので引き受け、用意された質問を事務的に投げかけていた。

志望動機は?

長所、短所は?

学生時代やり遂げたことは?

そんな事聞いたところでそいつの中身が分かるわけじゃないのにと思いながら。


そんな形式的な面接ならまだよかったのだが、悪ふざけが過ぎる上の奴らは、気に入った女が来たらセクハラ丸出しの発言をしだした。

大企業が聞いて呆れる。

困り顔の女子学生を見て喜んでる変態オヤジにはヘドが出るけど、逆らう程熱心だったわけじゃないから放っておいた。


そんな時。


その日最後の面接で、思いもよらない出来事が起こった。

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